(新潮社版 工藤精一郎訳 上巻p.5〜p.180)
登場人物
フルネーム | 愛称 | 人物像 |
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ロジオン・ロマーヌイチ・ ラスコーリニコフ | ロージャ | 主人公。元学生で、23歳。 家賃を滞納している。 |
アリョーナ・イワーノヴナ | 高利貸しの老婆 | |
リザヴェータ・イワーノヴナ | アリョーナの義理の妹。35歳。 | |
セミョーン・ザハールイチ・ マルメラードフ | ソーニャの実の父 | |
カテリーナ・イワーノヴナ・ マルメラードワ | マルメラードフの再婚した妻。 3人の子連れ。 ソーニャの義理の母。 | |
ソフィヤ・セミョーノヴナ・ マルメラードワ | ソーニャ ソーネチカ | マルメラードフと前妻の子。 |
ナスターシヤ・ペトローヴナ | ナスチェンカ | パーシェンカの女中 |
プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ・ ザルニーツィナ | パーシェンカ | ロージャの大家 |
アヴドーチヤ・ロマーノヴナ・ ラスコーリニコワ | ドゥーネチカ ドゥーニャ | ロージャの妹 |
プリヘーリヤ・アレクサンドロブナ・ ラスコーリニコワ | ロージャの母 | |
アルカージイ・イワーノヴィチ・ スヴィドリガイロフ | ドゥーニャを家庭教師に 雇っていた家の主人 | |
マルファ・ペトローヴナ | スヴィドリガイロフの妻 | |
ピョートル・ペトローヴィチ ・ルージン | ドゥーニャの婚約者。 45歳。 | |
ドミートリイ・プロコーフィチ・ ウラズミーヒン | ラズミーヒン | ロージャの学生時代の友人 |
コッホ | 老婆に金を借りに来た男。 事件の第一発見者。 | |
ペスチャコフ | 老婆に金を借りに来た若い男。 事件の第一発見者。 予審判事を目指して勉強中の学生。 |
あらすじ
ペテルブルグにて、7月はじめの酷暑の頃のある日の夕暮れ近く、主人公の青年ラスコーリニコフはあれの下見のため、高利貸しの老婆アリョーナ・イワーノヴナを訪ねた。
その帰りに寄った居酒屋で、ラスコーリニコフは退職官使のマルメラードフの身の上話を聞かされることになる。マルメラードフは現在の妻とは再婚で、お互いに連れ子がいる。彼の実の娘ソーニャと、妻の幼い連れ子3人だ。酒を飲んだくれて働かない彼の代わりに、娘のソーニャは若くして娼婦になり父親の代わりに家庭を支えていた。五週間ほど前のある日、元上司の好意によってマルメラードフは職に復帰することになる。その時の妻や娘の喜びようと言ったらなかった。しかし、六日前に初めての俸給を持ち帰った時、彼はその残りを全て持ち出して家を飛び出した。それから家を出て五日間、出勤することもなく持ち出した金は酒に全部使ってしまったと言う。
マルメラードフが話し終えると、ラスコーリニコフは彼に頼まれて彼を家へ連れて帰ってやった。彼を一目見た妻カテリーナ・イワーノヴナは、叫びながら彼の髪を持って引きずりまわした。妻に追い出されたラスコーリニコフは、部屋を出る際にソーニャのことを思ってポケットに入っていた銅貨を一掴み置いて行った。
翌朝、ラスコーリニコフは女中のナスターシャに起こされ母からの手紙を受け取った。妹ドゥーニャがルージンという男と婚約し、母と共にもうじきペテルブルグにやってくるという内容だった。この母の手紙はひどく彼を苦しめた。母と兄のために自ら犠牲になろうとする妹・息子の成功こそが一家の幸せであると信じ娘を犠牲にしようとすることを厭わない母を思い、見えすいた発言や行動をするルージン氏への激しい憎悪が彼の身内に燃えたぎっていた。
手紙を読み終えて部屋を飛び出ししばらく考え込みながら歩いていたラスコーリニコフは、K通りである女性の姿を目にする。その少女の歳は15ほどでひどく若く、破られた服を慣れない男の手で着せられたような格好をしていた。酔っているのかふらふらとおぼつかない足取りで歩きベンチに座り込んだ。彼女は初めて男にあそばれ放り出されたのだと確信したラスコーリニコフは、少し離れた場所からこちらを見つめ少女を狙っていると思しき脂ぶとりの伊達男を発見する。ラスコーリニコフはその紳士に対して憎悪の念を抱き、立ち去れと怒鳴りつけ喧嘩が始まった。いよいよ殴り合いが始まるというときに巡査が二人の間に入り、ラスコーリニコフに話を聞く。ベンチに座りこんだ正体のない少女のことを説明しあの男から守るよう巡査に頼んだラスコーリニコフは、少女に帰りの馬車代を渡してその場を去った。